ドルコスト平均法か一括投資のどちらが良いのでしょうか?株式投資を始めると必ずと言っていいほど直面するこの疑問をやさしく解説したいと思います。
- ドルコスト平均法と一括投資の基本的な特徴を理解しよう
- 過去の日経平均株価とS&P500ではどうだったか見てみよう
- どんな相場を想定するかで決まる選択肢
- 結論:自分の投資期間において、どんな相場を想定するか?心理的に許容できるか?で決まる!
ドルコスト平均法と一括投資の基本的な特徴を理解しよう
ドルコスト平均法と一括投資を比べるときの前提
ドルコスト平均法とは、定期的に一定額を買い付ける方法です。
一括投資とは、一度に全額を買い付ける方法です。
株式投資を始めると遅かれ早かれドルコスト平均法と一括投資という方法があることを知り、結局どちらが良いのだろう?という疑問が出てきます。この疑問を解決するには、それぞれの基本的な特徴をしっかりと自分で理解することが重要です。
ここでは、次のようにドルコスト平均法と一括投資の前提を決めます。
<前提>
①投資期間は1年間。
②入金は合計12万円。ドルコスト平均法では毎月1万円。
③3つの相場パターン(上昇、下落、ジグザグ)での平均株価はすべて1,550円。
③はこれから使用する3つの相場パターンそれぞれを考える時には関係ありませんが、3つのパターン同士の数字を比較する場合に公正に比較できるように設定しました。
前置きが長くなりましたがそれでは見ていきましょう。
上昇相場ではどちらが有利か?
数字がキライな人はこの表はスルーしてもらってもOKです。
株価は1,000円から上昇していき、ドルコスト平均法では毎月1万円を買い付けし、一括投資では1月に12万円分買っていることを数字で示しています。
株価 (円) | ドルコスト平均法 | 一括投資 | |||||
入金(円) | 買付株数 | 株数累計 | 入金(円) | 買付株数 | 株数累計 | ||
1月 | 1,000 | 10,000 | 10.0 | 10.0 | 120,000 | 120 | 120 |
2月 | 1,100 | 10,000 | 9.1 | 19.1 | 0 | 0 | 120 |
3月 | 1,200 | 10,000 | 8.3 | 27.4 | 0 | 0 | 120 |
4月 | 1,300 | 10,000 | 7.7 | 35.1 | 0 | 0 | 120 |
5月 | 1,400 | 10,000 | 7.1 | 42.3 | 0 | 0 | 120 |
6月 | 1,500 | 10,000 | 6.7 | 48.9 | 0 | 0 | 120 |
7月 | 1,600 | 10,000 | 6.3 | 55.2 | 0 | 0 | 120 |
8月 | 1,700 | 10,000 | 5.9 | 61.1 | 0 | 0 | 120 |
9月 | 1,800 | 10,000 | 5.6 | 66.6 | 0 | 0 | 120 |
10月 | 1,900 | 10,000 | 5.3 | 71.9 | 0 | 0 | 120 |
11月 | 2,000 | 10,000 | 5.0 | 76.9 | 0 | 0 | 120 |
12月 | 2,100 | 10,000 | 4.8 | 81.6 | 0 | 0 | 120 |
グラフにするとこんな感じです。
上昇相場での結果をまとめるとこんな感じです。
上昇相場 | ドルコスト平均法 | 一括投資 |
買付回数(回) | 12 | 1 |
買付株数(株) | 81.6 | 120 |
平均買付単価(円) | 1,470 | 1,000 |
最終評価額(万円) | 17.1 | 25.2 |
同じ12万円の入金で最終評価額に大きく差が出ました。
上昇相場では最終評価額はもちろん一括投資が有利となりました。
いずれも入金総額12万円を上回りました。
下落相場ではどちらが有利か?
数字がキライな人はこの表はまたスルーしてもらってもOKです。
株価は2,100円から下落していき、ドルコスト平均法では毎月1万円を買い付けし、一括投資では1月に12万円分買っていることを数字で示しています。
株価 (円) | ドルコスト平均法 | 一括投資 | |||||
入金(円) | 買付株数 | 株数累計 | 入金(円) | 買付株数 | 株数累計 | ||
1月 | 2100 | 10,000 | 4.8 | 4.8 | 120,000 | 57 | 57 |
2月 | 2000 | 10,000 | 5.0 | 9.8 | 0 | 0 | 57 |
3月 | 1900 | 10,000 | 5.3 | 15.0 | 0 | 0 | 57 |
4月 | 1800 | 10,000 | 5.6 | 20.6 | 0 | 0 | 57 |
5月 | 1700 | 10,000 | 5.9 | 26.5 | 0 | 0 | 57 |
6月 | 1600 | 10,000 | 6.3 | 32.7 | 0 | 0 | 57 |
7月 | 1500 | 10,000 | 6.7 | 39.4 | 0 | 0 | 57 |
8月 | 1400 | 10,000 | 7.1 | 46.5 | 0 | 0 | 57 |
9月 | 1300 | 10,000 | 7.7 | 54.2 | 0 | 0 | 57 |
10月 | 1200 | 10,000 | 8.3 | 62.5 | 0 | 0 | 57 |
11月 | 1100 | 10,000 | 9.1 | 71.6 | 0 | 0 | 57 |
12月 | 1000 | 10,000 | 10.0 | 81.6 | 0 | 0 | 57 |
グラフにするとこんな感じです。
下落相場での結果をまとめるとこんな感じです。
下落相場 | ドルコスト平均法 | 一括投資 |
買付回数(回) | 12 | 1 |
買付株数(株) | 81.6 | 57 |
平均買付単価(円) | 1,470 | 2,100 |
最終評価額(万円) | 8.2 | 5.7 |
同じ12万円の入金で今度も最終評価額に大きく差が出ました。
下落相場では最終評価額はもちろんドルコスト平均法が有利となりました。
ジグザグ相場ではどちらが有利か?
数字がキライな人はこの表は華麗にスルーしてもらってもOKです。
株価は1,550円→2,100円→1,000円を繰り返しジグザグに推移し、ドルコスト平均法では毎月1万円を買い付けし、一括投資では1月に12万円分買っていることを数字で示しています。
株価 (円) | ドルコスト平均法 | 一括投資 | |||||
入金(円) | 買付株数 | 株数累計 | 入金(円) | 買付株数 | 株数累計 | ||
1月 | 1550 | 10,000 | 6.5 | 6.5 | 120,000 | 77 | 77 |
2月 | 2100 | 10,000 | 4.8 | 11.2 | 0 | 0 | 77 |
3月 | 1000 | 10,000 | 10.0 | 21.2 | 0 | 0 | 77 |
4月 | 1550 | 10,000 | 6.5 | 27.7 | 0 | 0 | 77 |
5月 | 2100 | 10,000 | 4.8 | 32.4 | 0 | 0 | 77 |
6月 | 1000 | 10,000 | 10.0 | 42.4 | 0 | 0 | 77 |
7月 | 1550 | 10,000 | 6.5 | 48.9 | 0 | 0 | 77 |
8月 | 2100 | 10,000 | 4.8 | 53.6 | 0 | 0 | 77 |
9月 | 1000 | 10,000 | 10.0 | 63.6 | 0 | 0 | 77 |
10月 | 1550 | 10,000 | 6.5 | 70.1 | 0 | 0 | 77 |
11月 | 2100 | 10,000 | 4.8 | 74.9 | 0 | 0 | 77 |
12月 | 1000 | 10,000 | 10.0 | 84.9 | 0 | 0 | 77 |
グラフにするとこんな感じです。
ジグザグ相場での結果をまとめるとこんな感じです。
ジグザグ相場 | ドルコスト平均法 | 一括投資 |
買付回数(回) | 12 | 1 |
買付株数(株) | 84.9 | 77.4 |
平均買付単価(円) | 1,414 | 1,550 |
最終評価額(万円) | 8.5 | 7.7 |
同じ12万円の入金で今度も最終評価額に差が出ました。
今回のジグザグ相場ではドルコスト平均法が有利となりました。
ただし、いずれも入金総額12万円を下回りました。
最終的な株価に影響を受けているのが分かります。今回の例は下落トレンドのあるジグザグ相場の場合と言えます。
過去の日経平均株価とS&P500ではどうだったか見てみよう
それでは、実際に過去20年間の相場に当てはめてみた場合に、ドルコスト平均法か一括投資かどちらが有利だったのかを見てみましょう。5年間ずつ時期をずらして見ることでどのような結果の違いがでるかに注目です。結果の見方はこれまでと同じです。
なお、ここでの前提条件は下記とします。
<前提>
①投資期間は120か月(10年間)。
②入金は合計120万円。ドルコスト平均法では毎月1万円。
③株価は毎月1日の終値。
日経平均株価での確認①2000年1月~2009年12月の10年間では?
結果はこうなりました。
ドルコスト平均法 | 一括投資 | |
買付回数(回) | 120 | 1 |
買付株数(株) | 100.5 | 61.4 |
平均買付単価(円) | 11,940 | 19,540 |
最終評価額(万円) | 106 | 65 |
ドルコスト平均法が有利となりました。
ただし、どちらの最終評価額も入金総額120万円を下回りました。
ドルコスト平均法は70か月目に一括投資での累計株数を超えました。
下落トレンドのジグザグ相場だったと言えますね。
日経平均株価での確認②2005年1月~2014年12月の10年間では?
結果はこうなりました。
ドルコスト平均法 | 一括投資 | |
買付回数(回) | 120 | 1 |
買付株数(株) | 101.9 | 105.4 |
平均買付単価(円) | 11,776 | 11,388 |
最終評価額(万円) | 178 | 184 |
僅差ですが一括投資が有利となりました。
どちらの最終評価額も入金総額120万円を上回りました。
ドルコスト平均法は一括投資での累計株数を超えることはありませんでした。
上昇トレンド気味のジグザグ相場だったと言えますね。
日経平均株価での確認③2010年1月~2019年12月の10年間では?
結果はこうなりました。
ドルコスト平均法 | 一括投資 | |
買付回数(回) | 120 | 1 |
買付株数(株) | 84.8 | 117.7 |
平均買付単価(円) | 14,158 | 10,198 |
最終評価額(万円) | 201 | 278 |
一括投資が有利となりました。
どちらの最終評価額も入金総額120万円を大きく上回りました。
ドルコスト平均法は一括投資での累計株数を超えることはありませんでした。
上昇相場だったと言えますね。
では、次に米国S&P500について同様に見ていきましょう。
S&P500での確認①2000年1月~2009年12月の10年間では?
結果はこうなりました。
ドルコスト平均法 | 一括投資 | |
買付回数(回) | 120 | 1 |
買付株数(株) | 1,041.8 | 860.5 |
平均買付単価(円) | 1,152 | 1,394 |
最終評価額(万円) | 116 | 96 |
ドルコスト平均法が有利となりました。
ただし、どちらの最終評価額も入金総額120万円を下回りました。
後半にはリーマンショックもあり、ゆるやかな下落相場だったと言えますね。
S&P500での確認②2005年1月~2014年12月の10年間では?
結果はこうなりました。
ドルコスト平均法 | 一括投資 | |
買付回数(回) | 120 | 1 |
買付株数(株) | 923.5 | 1,015.9 |
平均買付単価(円) | 1,299 | 1,181 |
最終評価額(万円) | 190 | 209 |
一括投資が僅差で有利となりました。
どちらの最終評価額も入金総額120万円を大きく上回りました。
途中少しジグザグしましたが上昇相場だったと言えますね。
S&P500での確認③2010年1月~2019年12月の10年間では?
結果はこうなりました。
ドルコスト平均法 | 一括投資 | |
買付回数(回) | 120 | 1 |
買付株数(株) | 671.1 | 1,117.5 |
平均買付単価(円) | 1,788 | 1,074 |
最終評価額(万円) | 217 | 361 |
一括投資が大きく有利となりました。
どちらの最終評価額も入金総額120万円を大きく上回りました。
きれいな上昇相場だったと言えますね。
ここまで見てきたように、ドルコスト平均法と一括投資のどちらが有利になるかはこれまでの相場でもまちまちだったようです。
どんな相場を想定するかで決まる選択肢
これからやってくる相場が上昇か下落かジグザグかが分かれば苦労はしません。「上昇だろうけど、下落やジグザグの可能性もあるなぁ。」などということがほとんどだと思います。どうしても数字で決めたい!という人向けに、ここでは少しだけ話を進めて期待値という考え方で見てみたいと思います。
※イメージはもう十分、数字はいらない!という人はスルーでOKです。
期待値=[起こった時の値]×[起こる確率]を足し合わせたもので表されます。
例えば、サイコロの目の出る期待値はこのように3.5となります。
(1×1/6)+(2×1/6)+・・・+(6×1/6)=3.5
上昇、下落、ジグザグどれも同じくらいあり得るなぁ~という場合
どれも同じくらいの確率と思う場合には。。。
1:1:1 | ドルコスト平均法 | 一括投資 |
買付回数 | 12 | 1 |
最終評価額(万円) | 11.3 | 12.9 |
そんな感じで思った場合は、一括投資にすればいいです。
上昇だと思うなぁ~。でも下落かジグザグもあり得るなぁ~という場合
上昇60%、下落とジグザグは20%と思う場合には。。。
6:2:2 | ドルコスト平均法 | 一括投資 |
買付回数 | 12 | 1 |
最終評価額(万円) | 13.6 | 17.8 |
そんな感じで思った場合は、一括投資にすればいいです。
下落だと思うなぁ~。でも上昇かジグザグもあり得るなぁ~という場合
逆に下落60%、上昇とジグザグが20%と思う場合には。。。
2:6:2 | ドルコスト平均法 | 一括投資 |
買付回数 | 12 | 1 |
最終評価額(万円) | 10.0 | 10.0 |
そんな感じで思った場合は、ドルコスト平均法、一括投資どちらも同じでした。
実際の相場では次に示すようにこれまで見てきたようなきれいな上昇、下落、ジグザグにはもちろんなりませんし、その程度もパターンもバラバラですが、このようにおおまかなパターンを想定する場合には、ドルコスト平均法か一括投資のどちらにするかの目安は立てれそうです。
実際には一括投資には一発勝負という心理的な面が大きく影響する
もし仮に自分で今後の想定パターンを作ることが出来て、それぞれの起こる確率を自分で設定できたとすれば、一つの目安として期待値の考え方などを使えば、理論上はドルコスト平均法か一括投資かどちらにするべきかという答えはここまで説明してきたように一応出ます。しかし、その結果がもし一括投資であった場合には、それを実行するのは現実的にはとても難しいものがあります。12万円を一括で投資するのと、1万円ずつ12回で投資するのでは心理的に大きく違うことを想像することは難しくはないと思います。一括投資は一発勝負です。それができる人は、一括投資が良いとなれば迷いなく一括投資をするのが賢明だと言えそうです。しかし、そこが心配な人にはドルコスト平均法を選ぶことになります。つまり、ドルコスト平均法は心理的に大変すぐれた方法だと言えます。
(おまけ)積立投資でも将来的には一括投資と同じような心構えが必要になるかも知れないという話
ただし、最終的には積立投資でも一括投資と同じような心構えが必要になる可能性がほんの少しだけあります。例えば、A社の株式を月1万円ずつ10年間積み立てる場合を考えてみます。10年後には元本は120万円に膨れ上がっています。つまりその時点で120万円分のA社の株式を保有していることになります。仮にですが、10年後でもA社の財務・経営状況などが現在とあまり変わりなく、かつ自分の状況もあまり変わりないとすれば、それは現時点で120万円をA社に一括投資することと同じ意味合いを持ちます。実際には10年間の間にはA社の状況も変わっているでしょうし、自分の収入なども変わっているでしょうから、同じ心構えということは良い意味でも悪い意味でも可能性はほぼないと言えるでしょう。
結論:自分の投資期間において、どんな相場を想定するか?心理的に許容できるか?で決まる!
今回の記事でドルコスト平均法と一括投資のそれぞれの特徴が理解できたと思います。投資期間は人それぞれ違います。どんな相場を想定するかも様々な情報があります。そして心理的に許容できるかどうかも人それぞれです。ドルコスト平均法と一括投資の基本的な特徴を理解した上で、皆さんのそれぞれにあった選択の一助になれば幸いです。
以上
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